為替市場では、ドル円が150円を突破したニュースが大きく報じられています。
しかし、2025年秋の相場を冷静に見渡すと、より注目すべきは**「クロス円」**の動きです。
ユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円など、ドルを介さない円の通貨ペアが上昇基調を強めています。
特に今は、
- 日銀が実質的に緩和を維持していること
- 欧州・英国・豪州が「高金利を長期化」させていること
この2つが重なり、金利差の固定化による円売り圧力が続いている状況です。
こうした環境の中で、クロス円の上昇トレンドが「第2の円安局面」として注目されています。
クロス円とは?──ドルに頼らない為替の主役たち
「クロス円」とは、ドルを介さずに円と直接取引される通貨ペアのことを指します。
代表的なものには、EUR/JPY(ユーロ円)、GBP/JPY(ポンド円)、AUD/JPY(豪ドル円)などがあります。
クロス円は、
- 各国の政策金利
- 経済指標(CPI、PMI、雇用統計など)
- 資源価格やリスクオン・オフの動き
に強く反応します。
また、**スワップポイント(通貨間の金利差による日々の受取利息)**が大きい通貨ペアが多く、
長期運用を行う投資家にとって非常に魅力的な投資先になっているのです。
💡2025年10月時点の例:
| 通貨ペア | スワップ金利(1万通貨・買い) | 政策金利差 |
|---|---|---|
| GBP/JPY | 約220円/日 | 約5.0% |
| AUD/JPY | 約130円/日 | 約4.0% |
| EUR/JPY | 約80円/日 | 約3.0% |
クロス円の仕組み:ドルを介さずに動く理由
通常の国際為替市場では、取引量の約9割が「ドル絡み」です。
たとえばユーロ/円を取引する場合も、実際の市場取引は「ユーロ→ドル→円」と2段階で決済されるケースが多くあります。
しかし、クロス円は市場上でドルを介さず直接レートが形成されるため、ドル円とは異なる値動きを見せることがあるのです。
- ドル円が横ばいでも、ユーロ円やポンド円は上昇する
- 米国要因よりも、欧州・英国・豪州などの指標に反応しやすい
このように、クロス円は「世界経済の多極化を映す通貨ペア」ともいえます。
ボラティリティ(値動きの大きさ)にも特徴あり
クロス円はドル円よりも値動きが大きい傾向があります。
そのため、短期トレーダーにとってはチャンスが多い一方、リスクも高めです。
| 通貨ペア | 1日の平均変動幅(2025年9月) | 特徴 |
|---|---|---|
| USD/JPY | 約0.8円 | 比較的安定 |
| EUR/JPY | 約1.1円 | 欧州経済に反応しやすい |
| GBP/JPY | 約1.6円 | 最もボラティリティが高い |
| AUD/JPY | 約1.2円 | 資源価格に連動しやすい |
ボラティリティが高いほど、スイング・デイトレにも適していますが、ポジションサイズの調整が欠かせません。
スワップ狙いの「通貨ペア別性格」
クロス円は、それぞれの通貨ごとに性格が異なります。
| 通貨 | 特徴 | 投資スタイル |
|---|---|---|
| ポンド(GBP) | 金利が高く値動きも大きい | 中〜上級者向け・高スワップ狙い |
| ユーロ(EUR) | 安定的で政治要因が少ない | 中期保有・分散投資に最適 |
| 豪ドル(AUD) | 資源国通貨。中国景気に連動 | スワップ+長期運用向き |
このように、それぞれの国の政策金利・経済構造の違いが、クロス円の性格を決定づけています。
クロス円特有のリスク
- ドル円+他通貨のダブルリスク
例:ポンド円は「ドル円+ポンドドル」の動きが複合するため、動要因が2倍になるイメージです。 - 地政学リスク・国際ニュースの影響
欧州や中東のニュースで突発的にボラティリティが上がる場合があります。 - スプレッドが広がりやすい
ドル円より取引量が少ないため、流動性が落ちる時間帯にはコストが上がることもあります。
クロス円は、単なる為替レート以上の意味を持つ通貨ペアです。
ドルを軸とした世界から一歩離れ、「どの地域が強いか」「どの国が資金を集めているか」を映し出す“経済の体温計”といえます。
投資家が見るべき「スワップの実力」
スワップ運用の魅力は「時間が味方する」という点にあります。
たとえば、ポンド/円を1万通貨、220円/日で保有した場合は次の通りです。
| 保有期間 | 受取スワップ(目安) |
|---|---|
| 30日 | 約6,600円 |
| 180日 | 約39,600円 |
| 1年 | 約80,000円超 |
単純計算では、為替が横ばいでも年利換算で8%前後のリターンを狙える計算になるのです。
ただし、当然ながら為替変動リスクも存在します。
一時的な円高が発生すれば、スワップ収益を帳消しにするほどの損失が出ることもあるのです。
したがって、ポジション管理とロスカット設定を徹底することが重要となります。
実践戦略──「分散+短期トレンドフォロー」

クロス円投資で安定した利益を得るためには、「どの通貨をどう組み合わせ、どのタイミングで仕掛けるか」が鍵になります。
単一通貨に依存するのではなく、スワップ収益とトレンドの両立を意識した“分散+短期トレンドフォロー”戦略を取ることで、相場変動に強いポートフォリオを作ることができるのです。
以下では、実践的な3つのステップに分けて解説していきます。
(1) スワップ3通貨分散法
おすすめは、GBP/JPY・AUD/JPY・EUR/JPYの3通貨分散です。
- 英国:高金利でスワップが大きい
- 豪州:資源国通貨で景気連動性が高い
- 欧州:比較的安定的でディフェンシブ
この3通貨を組み合わせることで、リスクを分散しながらスワップを最大化できます。
(2) テクニカル分析による押し目買い戦略
- 週足20日移動平均線を基準に押し目を待つ
- RSIが30〜40に近づいたタイミングで買いエントリー
- 売りポジションは取らず、買い方向限定でトレンドフォロー
(3) ポジション管理の基本
- 証拠金維持率は300%以上を目安
- 長期保有前提なら、ロット数を減らしてでも余裕資金で運用
- ロスカットは「価格」ではなく「維持率」で判断するのがおすすめです。
この3つの戦略は、どれも「リスクを抑えながらスワップを活かす」ことを目的としています。
クロス円はボラティリティ(値動きの幅)が大きいため、焦らずに“待つ投資”を心がけることが成功の秘訣です。
短期的な値動きに惑わされず、テクニカル分析と資金管理を徹底することで、クロス円運用は「長期で安定した利益を積み上げる投資」へと変わります。
2025年後半の注目イベント
| 時期 | イベント | 為替への影響 |
|---|---|---|
| 10月末 | 日銀金融政策決定会合 | 利上げ見送りなら円売り加速 |
| 11月 | 米FOMC・BOE会合 | 金利据え置きが続けば円売り維持 |
| 12月 | IMF世界経済見通し | 成長見通し下方修正なら一時的な円買いリスクも |
結論:クロス円は「第2の円安局面」へ
為替市場は今、ドル円相場を超えて「クロス円上昇トレンド」に突入しています。
各国の高金利政策が維持され、日銀が緩和スタンスを続ける限り、円売り構造は中期的に続く可能性が高いでしょう。
ただし、過度なポジション集中や短期的な過熱には注意が必要です。
スワップ運用は「時間を味方につける投資」であり、押し目を拾いながら長期保有で育てる戦略が最も合理的だといえます。
