2025年も後半に入り、為替市場では大きな変化が続いています。
ドル安基調が鮮明になる一方で、円やユーロ、スイスフランといった安全資産通貨は堅調な動きを見せているのです。
また、米国の財政リスクや各国中央銀行の政策スタンスが相場を揺さぶり、投資家の資金は新興国やアジア市場へも流入しています。
本記事では、最新の為替マーケットの動きと背景要因、主要通貨ペアの展望を詳しく解説します。
為替市場の規模と取引構造の変化

為替市場は、株式や債券をはるかに上回る世界最大級の金融市場です。
2025年の最新調査では、その規模が過去最高水準に拡大しており、従来の主要通貨ペアに加えて新興国通貨やマイナー通貨の存在感が増しています。
本項目では、その規模感と取引構造の変化について詳しく見ていきます。
世界のFX市場規模は日平均10兆ドル超
国際決済銀行(BIS)が2025年春に発表した調査によると、世界の外国為替(FX)市場の取引規模は日平均約10兆ドルに到達しました。
これは2022年時点(約7.5兆ドル)から大幅に増加した水準で、金融市場全体の中でもFXが圧倒的な流動性を持つことを改めて示しています。
背景には、ヘッジファンド・機関投資家の高頻度取引(HFT)の拡大や、新興国企業の国際取引増加があり、実需と投機の両面で需要が拡大しています。
「7大通貨ペア」のシェア低下
これまで市場の中心を占めていた「メジャー7通貨ペア」(EUR/USD、USD/JPY、GBP/USD、USD/CHF、AUD/USD、USD/CAD、NZD/USD)の取引シェアは、2022年:85% → 2025年:66% に低下。
つまり、依然として中心的役割は保っているものの、マイナー通貨ペアや新興国通貨ペアの存在感が増しているという構造変化が起きています。
EUR/USDとUSD/JPYの突出した流動性
その中でも、EUR/USD と USD/JPY の2大ペアは依然として世界取引の中心。
理由は以下の通り:
- EUR/USD → 世界最大の貿易・金融圏であるユーロ圏と米国の通貨ペアで、国際決済や投資フローの基軸。
- USD/JPY → 日本は世界有数の対外資産保有国であり、外貨運用・ヘッジ需要から取引高が高水準を維持。加えて円が「安全資産」として買われる局面が多い。
新興国通貨の台頭
ブラジルレアル(BRL)、インドルピー(INR)、メキシコペソ(MXN)、人民元(CNY)などが近年シェアを拡大。
特に人民元は、中国の貿易・投資活動の増加や「一帯一路」構想を背景に国際化が進み、取引参加者が拡大しています。
投資家は高金利通貨としての魅力や、リスク分散先として新興国通貨を選ぶケースが増加しているのです。
構造変化の意味
FX市場の流動性が特定通貨ペアから多様な通貨へ分散しているため、市場全体としてボラティリティが高まりやすい傾向。
「ドル一強」の構造は続きつつも、ユーロ・円・人民元・新興国通貨がより重要な役割を果たす方向へとシフト。
取引機会は広がる一方で、マイナー通貨はスプレッドが広がりやすく、投資家にとってはリスク管理がより重要になっています。
このように、為替市場は「ドル・ユーロ・円」を中心に据えつつも、多様な通貨が流動性を拡大し、投資機会とリスクが同時に広がる局面を迎えています。
今後は市場の分散化が進むことで、投資家にとってはより戦略的な通貨選択とリスク管理が求められるでしょう。
ドル(USD):利下げ期待で下落基調
米国の金利政策に対する利下げ観測が強まり、ドルは弱含み。
政府機関閉鎖リスクや歳出を巡る政治的混乱もドル安要因となっています。
一部では「ドルはもはや安全資産とみなされていない」との声もあり、投資資金が金や他通貨へシフトする動きが見られます。
円(JPY):安全通貨としての強さ
円は直近で最も強い通貨の一つとされ、USD/JPY は下落基調。
MUFGの予想では年末にかけて 144円前後まで円高が進む可能性があるとされています。
日本政府・財務省は「過度な為替変動には適切に対応する」と表明しており、介入警戒感も相場を支えています。
ユーロ(EUR):上昇余地拡大
ユーロは2025年に入り対ドルで 12%超の上昇 を記録。
ECBの金融政策がタカ派姿勢を維持する一方、ドル側の利下げ観測が強まっているため、EUR/USDはさらに上昇するとの見方が増えています。
複数の大手銀行は、今後1.20〜1.25ドル水準を目指す可能性を指摘。
スイスフラン(CHF):SNBの介入で注目
スイス国立銀行(SNB)はフラン高を抑えるために為替介入を実施。
米国との共同声明では「競争的通貨安政策は取らない」としつつも、過度な変動を和らげる姿勢を示しました。
リスク回避局面では依然として買われやすく、安全資産としての地位を維持しています。
新興国通貨と外貨準備
インドの外貨準備高は2025年9月末時点で 7,002億ドル と過去最高水準。
輸入11か月分をカバーできる堅調な備え。
新興国通貨は資金流入の恩恵を受けつつも、依然として利回り差や地政学リスクに弱い構造を抱えています。
アジア全体では過去9か月で 1,000億ドル規模の資本流入 が確認され、投資資金の多様化が進んでいます。
今後の注目材料とリスク
| 注目テーマ | 影響内容 |
|---|---|
| 米国FRBの利下げ時期 | ドルの中長期トレンドを決定 |
| ECB・日銀の政策動向 | ユーロ高・円高要因に |
| 為替介入リスク | 円・フラン市場で特に警戒 |
| 米国財政問題 | 政府閉鎖や債務上限問題がドル安要因 |
| 地政学リスク | 貿易摩擦・紛争が新興国通貨に打撃 |
まとめ:2025年後半の為替展望
現状、為替市場は「ドル安・円高・ユーロ高」という流れが優勢です。
ただし、各国の金融政策や地政学リスクによって短期的な変動は激しくなる可能性があります。
投資家にとっては、
- ドル安基調を背景にユーロや円の強さに注目
- 新興国通貨は高利回り魅力がある一方でリスクも大きい
- 政策介入や市場リスクを常に意識する必要がある
という状況が続きそうです。

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