南鳥島でレアアース調査が本格始動|調査船「ちきゅう」出港確定

日本の資源戦略が、いよいよ「構想」から「実行」へと移行しつつあります。
南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)において、レアアース泥の調査・採鉱に向けた実証試験が、具体的な日程と体制を伴って始動することが明らかになりました。

調査船は、世界有数の深海掘削能力を持つ地球深部探査船「ちきゅう」です。
出港日は2026年1月11日、帰港は2月14日とすでに確定しており、日本の「国産レアアース」構想は、もはや計画段階ではなく実行フェーズに入ったと言えます。

南鳥島EEZの海底下には、電気自動車や半導体、再生可能エネルギーなどに不可欠なレアアースを高濃度で含む「レアアース泥」が存在することが、これまでの調査で確認されています。
本記事では、南鳥島レアアース調査の概要と背景、調査船「ちきゅう」による深海6,000メートルでの試験内容、そしてこの取り組みが日本の産業・経済安全保障に与える影響について詳しく解説します。

なぜ今「南鳥島レアアース」が注目されるのか

レアアースは、現代の先端産業に欠かせない重要資源です。
電気自動車のモーター、風力発電設備、スマートフォンや半導体、防衛・宇宙分野に至るまで、その用途は多岐にわたります。

一方で、世界のレアアース供給は特定の国・地域に大きく偏っています。
この供給構造は、地政学リスクや外交問題が発生した際に、産業活動へ直接的な影響を与える可能性をはらんでいるのです。

日本も例外ではなく、長年にわたりレアアースの多くを海外輸入に依存してきました。
過去には供給制限や価格高騰を経験しており、「安定供給の確保」は日本の経済安全保障における重要課題の一つとなっています。

レアアース市場の現状については、こちらの記事もご確認ください。
レアアース最前線:住友金属鉱山・双日・日立金属が描く資源再編の構図 – FX長期投資ラボ — 経済ニュースで育てる資産

こうした背景の中で、自国の排他的経済水域内に存在する南鳥島のレアアース泥は、日本にとって極めて戦略的な意味を持つ資源として注目されているのです。

南鳥島に眠るレアアース泥とは何か

南鳥島は日本最東端に位置する島で、その周辺海域のEEZ内には、レアアース元素を高濃度に含む堆積物、いわゆる「レアアース泥」が広範囲に分布していることが確認されています

このレアアース泥は、陸上鉱山とは異なり、比較的広い範囲に均一に堆積している点が特徴です。
理論上は長期的な採取が可能であり、日本が将来的に安定したレアアース供給源を確保するうえで、大きなポテンシャルを持つと考えられています。

また、南鳥島EEZは日本の完全な管轄下にあり、他国との領有権問題が生じにくい点も重要です。
このことは、資源開発を中長期的に進めるうえで大きな強みとなります。

レアアース調査の概要|出港日・調査船はすでに確定

今回実施されるレアアース調査は、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環として進められています。
研究開発および実施主体は、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)です。

調査船は地球深部探査船「ちきゅう」

調査に使用されるのは、JAMSTECが運用する「地球深部探査船ちきゅう」です。
「ちきゅう」は、世界でも数少ない本格的な深海掘削能力を持つ研究船で、過去にも水深数千メートルでの掘削・揚泥作業を成功させてきました。

今回の南鳥島調査では、この「ちきゅう」を用いて、水深約6,000メートルの深海に採鉱機器を降下させる試験が行われます。

出港・帰港スケジュール(確定情報)

  • 出港:2026年1月11日(日)
    (清水港/静岡県静岡市)
  • 帰港:2026年2月14日(土)
    (同港)

約1か月にわたる航海で、採鉱システムの接続や運用に関する重要な検証が実施される予定です。

水深6,000メートルで行われる世界初級の技術検証

今回の試験の最大の特徴は、水深約6,000メートルという極めて深い海底で、採鉱システムの接続と作動確認を行う点にあります。

採鉱方式には、海洋石油や天然ガス開発で用いられてきた泥水循環方式を応用し、日本独自に改良された「閉鎖型循環方式」が採用されています。
この方式では、採鉱時に発生する懸濁物が周囲の海水中に拡散することを抑制でき、環境負荷を低減できるとされています。

閉鎖型循環方式とは、採鉱で使う泥水(流体)を外部の海水中に放出せず、システム内部で回収・再利用しながら循環させる採鉱方式のことです。
もっとわかりやすく言えば、「海底で掘った泥を、周囲の海にばらまかず、パイプの中だけで回収・輸送する仕組み」を指します。

従来であれば開放型と呼ばれる採鉱方式を実施しており、
1.海底を掘削することで鉱物を採取します。
2.掘り崩された堆積物は泥や濁水となって周囲の海水中に直接放出されます。
3.掘削によって生じた濁りは海流に乗って拡散し、採鉱地点の周辺だけでなく、より広い範囲にまで広がっていきます。
その結果、どの程度の範囲に、どれほどの期間影響が及ぶのかを正確に把握することが難しく、深海生態系への影響評価や長期的な環境変化の検証が困難になるという課題があるのです。

そのために閉鎖型循環方式を採用したわけなのですが、水深6,000メートル級でのこのような接続試験は世界的にも前例が少なく、日本の技術力を示す重要な実証機会となります。

環境モニタリングを同時に行う理由

深海資源開発において、環境への配慮は国際的にも極めて重要なテーマです。
今回の調査では、採鉱試験と並行して、厳格な海洋環境モニタリングが実施されます。

海底には、海底設置型観測装置「江戸っ子1号COEDO」や環境DNA自動採取装置、ハイドロフォンなどが設置され、採鉱作業中の環境変化が継続的に観測されます。
さらに、船上では生物の光反応を利用した汚染監視システムの性能試験も行われる予定です。

これらの観測は、国際標準規格(ISO)に基づいて実施されており、将来の商業化や国際ルール形成を見据えた取り組みと言えます。

今回の調査が本格採鉱につながる意味

今回実施される調査は、あくまで採鉱システムの接続と作動確認を目的としたものです。
しかし、その意義は極めて大きく、2027年に予定されている本格的な採鉱試験への重要な布石と位置づけられています。

この段階で技術的・環境的な課題を洗い出し、実用化に向けたデータを蓄積することで、日本独自のレアアース供給体制構築が現実味を帯びてくるのです。

まとめ|南鳥島EEZで始まるレアアース調査を投資家はどう見るべきか

南鳥島EEZで始まるレアアース調査は、短期的な業績インパクトよりも、中長期の産業構造と市場評価を左右するテーマとして捉える必要があります。
現時点では商業生産に至っているわけではなく、あくまで技術検証と環境評価の段階ですが、「調査船・日程・方式が確定した」という点は、投資家にとって重要な意味を持つのです。

まず市場の初期反応としては、特定企業の業績期待よりも、国家戦略としての本気度が確認されたという受け止め方が中心になると考えられます。
日本はこれまで、レアアースの安定供給について「必要性は認識しているが、現実的な選択肢は限られている」と見られてきました。
しかし、深海6,000メートルでの実証試験が具体的に進むことで、「技術的に実行可能な選択肢が存在する」ことを示した点は、市場心理に与える影響が小さくありません。

投資家視点で重要なのは、このプロジェクトが単独で収益を生むかどうかではなく、
「日本の交渉力・選択肢・リスク耐性を高める材料になるか」という点です。
たとえ短期的に大量供給が実現しなくても、「国産レアアースという代替ルートが存在する」という事実そのものが、価格交渉力や調達戦略に影響を与えます。
これは、企業価値や国家リスクプレミアムの観点から見ても無視できません。

また、中長期的には以下のような分野で注目が集まりやすくなります。

  • レアアース分離・精製技術を持つ企業
  • 深海機器・海洋エンジニアリング関連企業
  • EV、半導体、再生可能エネルギーといったレアアース多消費産業
  • 経済安全保障・資源戦略を重視する政策テーマ株

特に、今回の調査で採用されている「閉鎖型循環方式」や環境モニタリングの考え方は、将来の国際ルールやESG評価とも密接に関係します。
単なる資源開発ではなく、「環境配慮を前提とした資源確保モデル」を提示できるかどうかは、日本企業全体の評価にも波及する可能性があるのです。

一方で、投資家として冷静に見るべき点もあります。
深海採鉱は技術的・コスト的なハードルが極めて高く、商業化までには時間がかかる可能性があり、また、国際世論や環境規制の動向次第では、計画の進捗が左右されるリスクも存在します。
そのため、短期的なテーマ株として過度に期待するよりも、長期的な国家戦略テーマの一部として位置づける視点が重要です。

総じて、南鳥島EEZで始まるレアアース調査は、「すぐに儲かる話」ではありません。
しかし、日本が資源調達において“選択肢を持つ国”になれるかどうかを占う重要な試金石であり、市場にとっては中長期の安心材料になり得るテーマです。
投資家にとっては、関連技術・政策・国際動向を含めて、継続的にフォローすべき分野と言えるでしょう。

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